【令和8年度税制改正】
社食・食事補助の非課税限度額が大幅引上げ
― 月7,500円へ拡充、実務対応と社内規程見直しのポイント ―
令和8年度税制改正大綱において、
会社が従業員に提供する食事(いわゆる社食・食事補助)に関する非課税制度が大きく見直されることが示されました。
今回の改正は、
単なる金額引上げにとどまらず、
- 福利厚生制度の設計
- 社内規程の見直し
- 給与課税・源泉徴収実務
に直接影響する、実務インパクトの大きい改正です。
本記事では、
- 改正内容を正確に整理したうえで
- 「会社として何を検討すべきか」
- 「どこでミスが起きやすいか」
を、実務目線で分かりやすく解説します。
1.今回の改正の全体像【まずは結論】
改正のポイント(要約)
令和8年度税制改正では、次の2点が大きく見直されます。
| 項目 | 現行 | 改正後(予定) |
|---|---|---|
| 社食等の会社負担分(非課税上限) | 月3,500円 | 月7,500円 |
| 深夜勤務時の夜食代(金銭支給) | 1回300円以下 | 1回650円以下 |
いずれも、
- 通達改正による対応
- 令和8年4月1日以後の支給分から適用
とされています。
👉
令和8年3月31日までの支給分は現行制度のまま
である点が、実務上の重要ポイントです。
2.なぜ今、食事の非課税が見直されるのか
背景① 物価上昇と実態の乖離
現行制度では、
- 非課税上限:月3,500円
→ 1日あたり約170円程度
となり、
実際の食事価格とかけ離れた水準になっていました。
結果として、
- 従業員負担が過度に大きい
- 実質的に福利厚生として機能していない
という問題が指摘されていました。
背景② 賃上げ・福利厚生拡充の政策意図
今回の改正は、
- 賃上げを補完する施策
- 現金給与ではなく「非課税福利厚生」の活用
を促す政策的意図が強いと考えられます。
👉
「給与を上げると税金・社会保険料が増える」
という構造の中で、
会社・従業員双方にメリットのある制度
として再設計された改正です。
3.社食・食事補助が非課税となるための基本ルール
ここで、改正後も変わらない
非課税判定の基本ルールを整理します。
非課税となるための2要件
従業員に食事を支給する場合、
次の 両方を満たす必要があります。
要件① 従業員が食事価額の50%以上を負担
- 食事の「価額」の50%以上
- 割合は改正後も変わらない
要件② 会社負担額が非課税限度額以下
- 現行:月3,500円以下
- 改正後:月7,500円以下
👉
どちらか一方でも満たさないと、全額課税
になる点が最大の注意点です。
4.令和8年3月までと4月以後で何が変わるのか
適用時期の整理(非常に重要)
| 支給時期 | 適用ルール |
|---|---|
| ~令和8年3月31日 | 現行制度(3,500円) |
| 令和8年4月1日~ | 改正後制度(7,500円) |
👉
**「改正年度=令和8年度」ではなく、
「支給日基準」**で判断します。
3月支給分と4月支給分が混在する月は、
厳密な区分管理が必要になります。
5.具体例で理解する「負担額の変化」
例:1食750円 × 月20日(食事価額15,000円)
現行制度の場合
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 食事価額 | 15,000円 |
| 会社負担 | 3,500円 |
| 従業員負担 | 11,500円 |
- 要件①:11,500円 ≥ 7,500円(50%) → OK
- 要件②:3,500円 ≤ 3,500円 → OK
👉 非課税
改正後制度の場合
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 食事価額 | 15,000円 |
| 会社負担 | 7,500円 |
| 従業員負担 | 7,500円 |
- 要件①:7,500円 ≥ 7,500円 → OK
- 要件②:7,500円 ≤ 7,500円 → OK
👉 非課税のまま、従業員負担が大幅に軽減
会社負担が7,500円を超えたらどうなる?
ここが実務上の落とし穴です。
会社負担額が7,500円を1円でも超えると、
その超過分だけでなく「全額」が課税対象
となります。
- 7,501円 → 7,501円全額が給与課税
- 源泉徴収・社会保険の対象
👉
「超過分だけ課税」ではない
点は必ず押さえておきましょう。
6.深夜勤務者への夜食代(現金支給)の取扱い
現行と改正後の比較
| 項目 | 現行 | 改正後 |
|---|---|---|
| 非課税限度額 | 300円/回 | 650円/回 |
対象となるのは、
- 深夜勤務に伴う夜食
- 現物支給が困難な場合
- 定額で支給される金銭
に限定されます。
実務上の注意点
- 通常の食事手当とは別枠
- 勤務1回ごとの上限
- 「深夜勤務」の実態確認が重要
👉
全従業員に一律支給すると課税リスク
が生じます。
7.社内規程の見直しが必須な理由
今回の改正により、
多くの会社で次のような検討が必要になります。
見直しが必要な社内文書
- 福利厚生規程
- 食事補助規程
- 給与規程
- 就業規則(関連条文)
検討すべきポイント
| 観点 | 内容 |
|---|---|
| 負担割合 | 50%要件を満たすか |
| 上限設定 | 7,500円を超えないか |
| 適用時期 | 4月1日以後限定か |
| 実務運用 | 月途中の管理方法 |
👉
規程を変えずに運用だけ変えるのはNG
です。
8.給与・源泉徴収実務への影響
課税になった場合の影響
- 給与課税
- 源泉所得税の計算対象
- 社会保険料の算定対象
特に、
「非課税だと思っていたが、実は超過していた」
というケースは、
年末調整や税務調査で指摘されやすい論点です。
9.同時に検討したい関連改正(マイカー通勤等)
令和8年度改正では、
- マイカー通勤手当の非課税限度額引上げ
- 月5,000円以下の駐車場代の非課税措置
も、同じく 4月1日以後適用予定です。
👉
福利厚生全体をまとめて見直す好機
といえるでしょう。
10.実務担当者向けチェックリスト
最後に、実務対応のチェックリストをまとめます。
令和8年4月までにやるべきこと
- 現行の食事補助制度の把握
- 負担割合(50%)の再計算
- 新上限(7,500円)でのシミュレーション
- 社内規程の改定
- 給与・経理システム設定確認
- 従業員への周知
まとめ|今回の改正は「福利厚生設計の見直しチャンス」
今回の食事の非課税限度額引上げは、
❌ 単なる数字の変更
ではなく、
⭕ 福利厚生を使って従業員満足度を高めるチャンス
です。
ただし、
- 50%要件は維持
- 上限超過は全額課税
- 適用時期は4月1日以後
という落とし穴も多く存在します。
制度を正しく理解し、
3月までに準備を終えておくことが、
実務担当者・経営者双方にとって重要といえるでしょう。