減損会計とは何か?初心者向けに全体像から理解する
減損会計とは、固定資産が将来生み出す価値(回収可能価額)が帳簿価額を下回った場合に、その差額を損失として認識する会計処理です。
日本基準では、
- 固定資産の減損に係る会計基準
- 企業会計基準適用指針第6号
に基づいて処理します。
なぜ減損会計が必要なのか?
減損会計の目的は一言で言うと、
「実態よりも高く資産を見せないため」
です。
減損会計がないと起きる問題
- 実際には赤字事業なのに
- 帳簿上は多額の固定資産が残り
- 財務諸表が“よく見えすぎる”
➡ 投資家・金融機関の判断を誤らせてしまう
このため、「資産の収益性が低下した場合は速やかに帳簿価額を見直す」仕組みとして減損会計が導入されています。
減損会計の全体フロー【まずはここを押さえる】
初心者の方は、まず次の4ステップを覚えてください。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① | 対象となる資産を把握 |
| ② | 資産をグルーピング |
| ③ | 減損の兆候があるか判定 |
| ④ | 減損損失を認識・測定 |
① 減損会計の対象となる資産
まず、すべての資産が減損対象になるわけではありません。
対象となる資産
減損会計の対象は、次の固定資産です。
- 有形固定資産(建物・機械など)
- 無形固定資産(ソフトウェア等)
- 投資その他の資産(投資不動産など)
対象外となる資産
次の資産は別基準で評価されるため対象外です。
| 対象外資産 | 理由 |
|---|---|
| 金融商品 | 金融商品会計基準 |
| 繰延税金資産 | 税効果会計基準 |
| 市場販売目的ソフト | 研究開発費基準 |
| 退職給付資産 | 退職給付会計基準 |
② 資産のグルーピング【実務で最も重要】
減損会計で最も判断が難しく、監査でも論点になるのがグルーピングです。
グルーピングの考え方
資産は、
「他の資産から独立したキャッシュ・フローを生み出す最小単位」
でまとめます 固定資産の減損に係る会計基準の適用指針
実務でよくあるグルーピング例
| 業種 | グルーピング単位 |
|---|---|
| 小売業 | 店舗単位 |
| 製造業 | 工場単位・製品ライン |
| 不動産業 | 物件単位 |
初心者がつまずきやすいポイント
❌ よくある誤解
「固定資産1つずつで判定する」
⭕ 正しい理解
“事業として収益を生む単位”でまとめる
③ 減損の兆候とは何か?
減損処理は、兆候がなければ原則として行いません。
主な減損の兆候(重要)
適用指針では、次のような兆候を例示しています。
① 営業損益・CFが継続してマイナス
- おおむね 過去2期連続の赤字
- 将来も回復見込みがない場合
② 使用方法・範囲の重大な変更
- 事業撤退
- 大幅縮小
- 遊休化
③ 経営環境の著しい悪化
- 市場縮小
- 技術陳腐化
- 規制強化
④ 市場価格の著しい下落
- 帳簿価額の50%以上下落が目安です。
【表】減損の兆候チェックリスト(実務用)
| チェック項目 | 該当 |
|---|---|
| 2期連続で営業赤字 | □ |
| 稼働率が大幅低下 | □ |
| 事業撤退・縮小 | □ |
| 市場価格50%以上下落 | □ |
1つでも該当すれば、次のステップへ進みます。
④ 減損損失の認識判定(超重要)
兆候があった場合、すぐに減損計上するわけではありません。
認識判定のルール
次の比較を行います。
| 比較対象 | 内容 |
|---|---|
| 帳簿価額 | 現在の資産価額 |
| 割引前将来CF総額 | 将来生み出すキャッシュ |
判定結果
- 帳簿価額 > 割引前将来CF総額
➡ 減損損失を認識 - 帳簿価額 ≤ 割引前将来CF総額
➡ 減損しない
なぜ「割引前」なのか?
初心者が疑問に思う点ですが、
認識判定は“回収できるかどうか”を見るだけ
だからです。
割引率は測定段階で使います。
減損損失の測定方法
減損損失を認識する場合、
帳簿価額 − 回収可能価額
が減損損失となります。
回収可能価額とは?
次のいずれか高い方です。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 正味売却価額 | 売ったらいくら残るか |
| 使用価値 | 使い続けた場合の価値 |
【表】正味売却価額 vs 使用価値
| 項目 | 正味売却価額 | 使用価値 |
|---|---|---|
| 基本 | 売却ベース | 継続使用 |
| 算定難易度 | 比較的低 | 高い |
| 実務 | 不動産で使用 | 多くのケース |
実務上の注意点(初心者が必ず知るべき)
① グルーピングを毎期変えてはいけない
- 原則 継続適用
- 変える場合は合理的理由が必要
② 将来CFは「楽観的にしすぎない」
- 中期経営計画との整合性
- 過去実績との乖離説明が重要
③ 監査で必ず見られるポイント
| 監査論点 | 内容 |
|---|---|
| 兆候判断 | なぜ兆候なしと言えるか |
| CF前提 | 根拠資料 |
| 割引率 | 説明可能か |
まとめ|減損会計は「考え方」を押さえる
減損会計は暗記ではなく、
「その資産は将来、本当に回収できるのか?」
という問いに答える会計です。
- グルーピング
- 兆候判断
- 将来CF
この3点を押さえれば、初心者でも十分に理解できます。
参考基準・資料
- 企業会計基準
「固定資産の減損に係る会計基準」 - 企業会計基準適用指針第6号
「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」