三国間貿易の消費税はどうなる?海外で仕入れて海外で販売する場合の実務をわかりやすく解説

海外取引を行う企業にとって、消費税の判定はしばしば悩ましい論点となります。とりわけ、日本法人が海外の仕入先から商品を購入し、その商品を日本に輸入することなく海外の得意先へ直接販売する、いわゆる「三国間貿易」では、売上や仕入れが日本の消費税の課税対象となるのか、迷われる方が少なくありません。

本稿では、三国間貿易の典型的な事例をもとに、売上の消費税区分、仕入税額控除の可否、不課税と輸出免税の違い、会計・申告実務上の留意点を、初心者にも理解しやすい形で丁寧に解説いたします。

事例の概要

当社は機械部品の製造メーカーです。得意先の海外進出に伴い、数年前に東南アジアのA国に100%出資の子会社B社を設立しました。現在、当社はB社で製造した機械部品を日本国内へ輸入し、国内で販売しています。

そのような中、東南アジア地域の景気回復を受け、今回、S国のC社から機械部品の大量注文を受けることになりました。そこで当社はA国のB社へ商品を発注し、製品はB社からC社へ直接輸送することとしました。つまり、当社が売買当事者ではあるものの、商品そのものは日本へ入ることなく、A国からS国へ移動します。

この場合、当社がC社に対して行う売上と、B社から行う仕入れについて、日本の消費税はどのように取り扱うべきでしょうか。

まず結論

このケースでは、C社に対する売上は日本の消費税の課税対象となりません(不課税)。また、B社からの仕入れについても日本の消費税は課税されていないため、仕入税額控除の対象にはなりません

実務ポイント
「海外に売っているから輸出免税」と考えるのではなく、まずはその商品が譲渡時点でどこにあったかを確認することが重要です。本件では、商品は終始国外にあるため、輸出免税ではなく不課税となります。

論点整理

本件を理解するためには、次の論点を順に整理するとわかりやすくなります。

論点確認事項本件の結論
1売上は国内取引か、国外取引か国外取引
2仕入れは日本の課税仕入れに該当するか該当しない
3売上に消費税はかかるかかからない(不課税)
4仕入税額控除はできるかできない
5輸出免税と同じか同じではない
6会計ソフト上の税区分はどうするか対象外・国外取引等で処理
7インボイス制度との関係はあるか通常の国内課税取引とは異なる

なぜ三国間貿易は不課税になるのか

消費税は「国内で行われた取引」が課税対象

日本の消費税は、すべての売買に課されるわけではありません。原則として、国内において事業者が行った資産の譲渡等が課税対象となります。

条文内容要点
消費税法4条1項国内において事業者が行った資産の譲渡等には消費税を課するまず国内取引かどうかを判定する
消費税法5条1項事業者は国内において行った課税資産の譲渡等につき納税義務を負う国内課税売上がある場合に納税義務が生じる
消費税法30条1項国内における課税仕入れ等について仕入税額控除が認められる国内課税仕入れが前提となる

したがって、本件でも最初に確認すべきなのは、その売買が国内取引なのか、国外取引なのかという点です。

物品売買は「商品の所在場所」で内外判定を行う

物品の売買、すなわち資産の譲渡については、原則として譲渡の時点でその商品がどこに所在していたかにより、国内取引か国外取引かを判定します。

国税庁タックスアンサーNo.6210「国外取引」においても、次のように示されています。

資産の譲渡または貸付けの場合は、一定の取引についての例外はありますが、原則として、その譲渡または貸付けが行われる時においてその資産が所在していた場所で国内取引かどうかを判定します。

本件では、機械部品はA国のB社にあり、そのままS国のC社へ輸送されます。商品は日本へ搬入されません。したがって、当社がC社に販売する商品は、譲渡時点において国外に所在する資産であり、国外取引に該当します。

ひとこと整理
誰が契約しているかよりも、商品がどこにあるかが重要です。日本法人が売主であっても、商品が国外にあれば国外取引となることがあります。

売上の取扱い

C社に対する売上は不課税

当社のC社に対する売上は、日本国内で行われた資産の譲渡ではありません。商品は国外にあり、日本に搬入されることもありません。したがって、この売上は日本の消費税の課税対象外(不課税)となります。

項目本件の内容
売上先S国のC社
商品の所在A国のB社に所在
商品の流れA国→S国
日本への搬入なし
消費税区分不課税
理由国外に所在する資産の譲渡であるため

輸出免税と不課税は異なる

実務上、最も誤解が生じやすいのがこの点です。海外の得意先に販売しているからといって、すべてが輸出免税になるわけではありません。

項目不課税輸出免税
意味そもそも課税対象外課税対象だが税率0%
代表例国外取引、給与、寄附など日本から海外へ輸出する取引
本件との関係該当非該当
課税売上割合への影響原則として課税売上に含まれない課税売上に含まれる

本件では、日本から商品を輸出しているわけではないため、輸出免税ではなく不課税として整理します。

誤りやすいポイント
「海外売上」=「輸出免税売上」と処理してしまうケースがありますが、三国間貿易では誤りとなることがあります。商品が日本から出ていない以上、輸出免税ではありません。

仕入れの取扱い

B社からの仕入れは課税仕入れに該当しない

当社がB社から行う仕入れについても、商品はA国に所在しており、日本国内で引渡しが行われるわけではありません。そのため、日本の消費税が課税される取引ではありません。

したがって、この仕入れは日本の課税仕入れには該当せず、仕入税額控除の対象にもなりません

項目本件の内容
仕入先A国のB社
商品の所在A国
引渡し場所国外
日本の消費税課税されない
課税仕入れ該当性該当しない
仕入税額控除できない

仕入税額控除ができない理由

仕入税額控除は、原則として国内における課税仕入れについて認められる制度です。本件では、B社からの仕入れに日本の消費税はかかっていません。つまり、控除の対象となる「支払った日本の消費税」自体が存在しないため、仕入税額控除はできません。

  • 国外で購入している
  • 日本に搬入していない
  • 日本の消費税が課税されていない
  • したがって課税仕入れではない

図解で整理する三国間貿易の消費税

本件の取引の流れ

取引契約当事者商品の場所消費税区分
仕入れ当社 ← B社A国不課税・対象外
売上当社 → C社A国または国外輸送中不課税
日本への輸入なし日本に来ない輸入消費税なし

判断のためのチェックポイント

  • 商品は日本国内に存在しているか
  • 商品は日本へ輸入されるか
  • 商品は国外から国外へ直接移動しているか
  • 日本国内で引渡しが行われていないか
  • 仕入時に日本の消費税が発生しているか

確認の順番
実務では、まず「商品がどこにあるか」、次に「日本に入るかどうか」、最後に「日本の消費税が発生しているか」を確認すると、整理しやすくなります。

会計処理・税区分の実務

会計ソフトや販売管理システムでは、税区分の設定を誤ると、消費税申告に影響が生じます。本件のような三国間貿易では、売上も仕入れも原則として国内消費税の計算対象外として処理するのが基本です。

取引一般的な税区分イメージ実務上の注意点
国外売上(三国間貿易)対象外、国外売上、不課税売上等輸出免税売上にしないこと
国外仕入(三国間貿易)対象外、国外仕入、不課税仕入等課税仕入れにしないこと
日本からの輸出輸出免税売上本件とは別論点
輸入時消費税課税仕入れ関連区分通関資料の保存が必要

実務担当者が誤りやすいポイント

  • 海外売上だからといって「輸出免税売上」にしてしまう
  • 海外からの仕入れを「課税仕入れ」として登録してしまう
  • 商品が日本へ入っていないのに輸入取引として処理してしまう
  • 証憑書類を十分に保存していない

インボイス制度との関係

本件のような三国間貿易は、通常、日本の国内課税取引ではありません。そのため、国内課税仕入れのように、適格請求書の保存が仕入税額控除の要件になる場面とは性質が異なります。

項目本件での考え方
売上側の適格請求書発行国内課税売上ではないため通常の論点になりにくい
仕入側のインボイス保存仕入税額控除の対象ではないため、日本の適格請求書は通常不要
必要な証憑海外インボイス、契約書、B/L、AWB、送金記録等

補足
インボイス制度の対象外であっても、証憑が不要になるわけではありません。税務調査では、国外取引であることを説明できる資料の保存が重要です。

保存しておきたい証憑書類

三国間貿易では、税務調査の際に「本当に国外取引であったのか」「商品は日本に入っていないのか」が確認されることがあります。そのため、次の資料はできる限り整えておくことをおすすめします。

書類内容保存目的
売買契約書当社とC社の契約内容売上取引の確認
発注書(PO)C社→当社、当社→B社取引経路の確認
商業送り状(Invoice)売上・仕入の請求書金額・相手先確認
パッキングリスト商品内容・数量商品の同一性確認
B/L・AWB輸送経路の確認資料日本不経由の立証
通関資料輸入の有無に関する資料日本に搬入されていないことの確認
入出金記録送金・回収記録実取引の立証

取引パターン別の比較

三国間貿易は、商品が日本を経由しないことが前提です。もし日本を経由する場合には、消費税の結論が変わることがあります。

取引パターン商品の流れ売上の取扱い仕入れの取扱い
本件(三国間貿易)A国→S国不課税課税仕入れでなく、仕入税額控除なし
日本経由で海外販売A国→日本→S国輸出免税売上輸入消費税は控除対象となり得る
日本へ輸入し国内販売A国→日本→国内顧客課税売上課税仕入れ・輸入消費税控除あり

初心者の方向けQ&A

海外の会社に売れば、すべて輸出免税になりますか?

いいえ、そうではありません。日本から海外へ商品を輸出する取引は輸出免税ですが、本件のように商品が最初から国外にあり、国外で引き渡される取引は、不課税となります。

海外からの仕入れは、すべて仕入税額控除できますか?

いいえ。仕入税額控除ができるのは、国内における課税仕入れや、輸入時に納付した消費税などがある場合です。本件のように国外で完結する仕入れについては、日本の消費税がかかっていないため、仕入税額控除はできません。

日本法人が契約主体でも不課税になるのですか?

はい。物品売買では、契約主体が日本法人であるかどうかではなく、原則として商品の所在場所により内外判定を行います。そのため、日本法人が売主であっても、商品が国外に所在していれば国外取引となることがあります。

まとめ

三国間貿易における消費税を理解するうえで最も大切なのは、「誰が売ったか」ではなく、「商品がどこにあるか」という視点です。

本件のように、A国のB社から商品を仕入れ、その商品を日本へ搬入することなくS国のC社へ直接販売する場合には、商品は終始国外に所在しています。そのため、C社に対する売上は日本の消費税の課税対象外(不課税)となり、B社からの仕入れも日本の課税仕入れに該当しないため、仕入税額控除は認められません。

実務では、会計ソフトの税区分設定を誤らないことに加え、契約書、海外インボイス、輸送書類、送金記録等を保存し、国外取引であることを説明できる状態を整えておくことが重要です。

根拠条文・参考資料

  • 消費税法4条1項(課税の対象)
  • 消費税法5条1項(納税義務者)
  • 消費税法30条1項(仕入れに係る消費税額の控除)
  • 消費税法施行令6条(内外判定)
  • 消費税法基本通達5-7-1
  • 国税庁 タックスアンサー No.6210「国外取引」

参考
国税庁タックスアンサー No.6210「国外取引」では、事業者が国外において購入した資産を国内に搬入することなく他へ譲渡する、いわゆる三国間貿易は、国外取引に該当し、課税の対象とはならない旨が示されています。

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