財産評価総論
― 相続税・贈与税の“すべての土台”を理解する ―
相続税・贈与税の計算において、最も重要なのは
財産をいくらで評価するか
です。
税率や控除以前に、評価額が誤っていれば、税額は大きく変わります。
本記事では、財産評価の基本原則から実務上の重要論点までを体系的に整理します。
1.財産評価の基本原則
相続税・贈与税の評価は、
「時価」が原則
です。
ただし、ここでいう時価は
- 実際の売買価格
- 不動産業者査定額
とは異なります。
税務上は、
財産評価基本通達に基づく評価額
が実務の基準となります。
2.評価時点
評価は原則として
| 税目 | 評価時点 |
|---|---|
| 相続税 | 相続開始時(死亡時) |
| 贈与税 | 贈与時 |
時点を誤ると重大な計算ミスになります。
3.評価の基本構造
財産評価は、大きく次の分類で整理できます。
| 財産区分 | 主な評価方法 |
|---|---|
| 土地 | 路線価方式・倍率方式 |
| 建物 | 固定資産税評価額 |
| 上場株式 | 課税時期の株価 |
| 非上場株式 | 類似業種比準価額等 |
| 預金 | 残高 |
| 債権 | 元本+利息 |
4.時価とは何か
税務上の時価とは、
不特定多数の当事者間で成立する通常の取引価額
とされています。
そのため、
- 親族間の低額売買
- 恣意的な価格設定
は否認対象になります。
5.財産評価の優先順位
評価方法は自由に選べるわけではありません。
例えば土地の場合、
- 路線価がある地域 → 路線価方式
- 路線価がない地域 → 倍率方式
という順序があります。
6.評価単位の考え方
実務で非常に重要なのが
評価単位
です。
例えば土地は、
- 1筆単位ではなく
- 利用単位ごと
に評価します。
これにより評価額が変わることがあります。
7.実務上の重要論点
① 土地の評価
土地は相続財産の中心論点です。
✔ 路線価
✔ 奥行価格補正
✔ 不整形地補正
✔ 角地補正
✔ 貸宅地評価
補正計算を誤ると評価額が大きく変動します。
② 建物の評価
建物は原則として
固定資産税評価額
で評価。
市場価格とは一致しません。
③ 上場株式の評価
上場株式は、
- 課税時期の終値
- 月平均価格
- 前月平均価格
- 前々月平均価格
のうち最も低い価額を選択できます。
④ 非上場株式
非上場株式は最難関論点。
- 類似業種比準価額
- 純資産価額
- 配当還元価額
株主区分により評価方法が異なります。
⑤ 債務控除との関係
財産評価と同時に、
- 実在する債務のみ控除可能
- 未確定債務は原則不可
という点も重要。
8.評価誤りが招くリスク
評価誤りは、
- 過少申告加算税
- 重加算税
につながる可能性があります。
特に問題になるのは、
- 名義預金
- 自社株評価の恣意性
- 土地の過度な補正
です。
9.財産評価の実務フロー
① 財産一覧作成
↓
② 評価単位確定
↓
③ 評価方法選択
↓
④ 補正計算
↓
⑤ 根拠資料保存
10.実務チェックリスト
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 評価時点 | 正しいか |
| 評価単位 | 利用単位か |
| 評価方法 | 通達に準拠か |
| 補正適用 | 適切か |
| 根拠保存 | 図面・資料 |
11.よくある誤解
❌ 市場価格で評価すればよい
→ 税務評価は別基準
❌ 固定資産税評価額=土地評価額
→ 原則は路線価
❌ 非上場株式は純資産だけでよい
→ 株主区分が重要
まとめ
財産評価は、
相続税・贈与税の“基礎工事”
です。
税率や特例よりも先に、
- 評価単位
- 評価方法
- 補正計算
を正確に理解することが重要です。