税務調査で否認された役員給与の実例
― 「よくある勘違い」が否認を招く ―
役員給与は、税務調査において必ずと言っていいほど確認される論点です。
そして否認されるケースの多くは、脱税目的ではなく、
「制度は知っているつもりだった」
「他社もやっていると思っていた」
という 実務上の思い込み によるものです。
本記事では、税務調査で実際によく見られる
否認された役員給与の典型例 を、理由とともに整理します。
1.期中で役員給与を増額したケース
事例
- 業績が好調になった
- 決算が見えてきた段階で
- 役員給与を途中から増額
税務上の判断
👉 増額部分は全額損金不算入
否認理由
- 定期同額給与ではない
- 利益調整と判断される
- 「業績が良いから増額」は合理的理由にならない
実務の落とし穴
「役員も頑張ったから」という感覚は
税務上は一切考慮されません。
2.定期同額給与を“少しだけ”変更したケース
事例
- 月額50万円 → 55万円
- 変更理由は特に文書化なし
税務上の判断
👉 変更後の給与は損金不算入
否認理由
- 金額の大小は関係ない
- 「同額であるか否か」が全て
実務の落とし穴
「5万円くらいなら問題ない」という考え方は
完全にNGです。
3.事前確定届出給与で支給額がズレたケース
事例
- 届出:7月に100万円
- 実際:7月に90万円(または110万円)
税務上の判断
👉 全額損金不算入
否認理由
- 届出どおりでない
- 一部不一致でもアウト
実務の落とし穴
- 一部未支給
- 支給日のズレ
いずれも 致命傷 になります。
4.業績悪化を理由にした「増額」
事例
- 業績が悪化
- モチベーション維持のため役員給与を増額
税務上の判断
👉 損金不算入
否認理由
- 業績悪化で増額は合理性なし
- 業績悪化時に認められるのは「減額」のみ
5.議事録を後から作成したケース
事例
- 税務調査で指摘
- 急いで株主総会議事録を作成
税務上の判断
👉 形式否認+実質否認
否認理由
- 後付けと判断
- 実態を裏付けない
6.否認を防ぐための実務ポイント
- 期首3か月以内に決定
- 原則、期中変更しない
- 変更する場合は理由と資料を残す
- 届出給与は「完全一致」が絶対条件
まとめ
役員給与の否認は「制度理解不足」より「運用ミス」で起こる
役員給与は、
やり方を間違えなければ安全だが、少しのズレで全否認される分野です。