相続税の課税価格と税額
― 計算構造を理解すれば実務は迷わない ―
相続税で最も重要なのは、
「何が課税価格になるのか」
「税額はどの順番で計算するのか」
この2点です。
相続税は単純に取得額に税率をかける税金ではありません。
4段階構造で計算されます。
本記事では、初心者でも理解できるように、課税価格の算定から最終税額までを実務目線で整理します。
1.相続税の計算の全体像
まず全体像を押さえます。
第1段階 課税価格の計算
第2段階 相続税の総額の計算
第3段階 各人の相続税額の計算
第4段階 各人の納付税額の計算
この順番で整理すれば混乱しません。
第1段階:課税価格の計算
まずは「相続税の対象となる財産」を確定します。
(1)本来の相続財産
被相続人に帰属していた財産のうち、金銭評価できるもの。
| 主な財産 | 実務ポイント |
|---|---|
| 不動産 | 路線価評価・倍率評価 |
| 預金 | 死亡日時点残高 |
| 上場株式 | 死亡日前後価格 |
| 未収金 | 実在確認 |
| 営業権 | 個人事業の場合も含む |
🔎 名義預金は実質判断
家族名義でも、
- 資金拠出者
- 管理状況
- 通帳印鑑の保管状況
で実質帰属を判断します。
(2)みなし相続財産
法律上は相続でなくても課税対象になります。
| 財産 | 非課税枠 |
|---|---|
| 死亡保険金 | 500万円×法定相続人 |
| 死亡退職金 | 500万円×法定相続人 |
🔎 受取人固有財産でも課税される点が重要。
(3)債務控除
課税価格から差し引けるもの。
- 借入金
- 未払税金
- 医療費
- 葬式費用
※香典返しは対象外。
(4)生前贈与加算
一定期間内の贈与は相続財産に加算。
課税価格 =
本来財産
+ みなし財産
- 債務
+ 生前贈与加算
第2段階:相続税の総額の計算
ここが最大の特徴です。
① 基礎控除
3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数
これを差し引いた金額が「課税遺産総額」。
② 法定相続分で仮分割
実際の分割とは関係ありません。
課税遺産総額 × 法定相続分
※相続放棄があっても人数に含めます。
③ 税率適用
相続税は超過累進税率です。
| 法定取得金額 | 税率 | 控除額 |
|---|---|---|
| ~1,000万円 | 10% | 0 |
| ~3,000万円 | 15% | 50万円 |
| ~5,000万円 | 20% | 200万円 |
| ~1億円 | 30% | 700万円 |
| ~2億円 | 40% | 1,700万円 |
| ~3億円 | 45% | 2,700万円 |
| ~6億円 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
④ 合計
全員分を合算したものが
相続税の総額
です。
第3段階:各人の相続税額
ここで初めて「実際の取得割合」を使用します。
各人の税額
= 相続税の総額 × 実際の取得割合
第4段階:各人の納付税額
最後に税額控除を反映します。
主な税額控除
| 控除 | 内容 |
|---|---|
| 配偶者の税額軽減 | 法定相続分または1億6千万円まで非課税 |
| 未成年者控除 | 20歳までの年数×10万円 |
| 障害者控除 | 85歳までの年数×10万円 |
| 贈与税額控除 | 既納贈与税を控除 |
| 外国税額控除 | 二重課税調整 |
実務上の重要論点
① 法定相続人の数
養子は原則1人まで算入(例外あり)。
② 相続放棄
放棄しても法定相続人の数には含まれます。
③ 配偶者軽減の誤解
配偶者が全部取得しても税額ゼロとは限らない。
将来の二次相続を必ず考慮。
④ 保険金の非課税枠
法定相続人でない受取人には適用なし。
計算の流れを図解で整理
① 財産集計
↓
② 債務控除
↓
③ 生前贈与加算
↓
④ 基礎控除
↓
⑤ 法定相続分で仮分割
↓
⑥ 税率適用
↓
⑦ 各人按分
↓
⑧ 税額控除
↓
納付税額確定
よくある実務ミス
| ミス | 原因 |
|---|---|
| 名義預金除外 | 実質判断不足 |
| 放棄者を人数から除外 | 基礎控除誤算 |
| 保険金非課税枠誤用 | 受取人確認不足 |
| 精算課税加算漏れ | 制度理解不足 |
まとめ
相続税の課税価格と税額は、
- 課税対象の確定
- 基礎控除
- 法定相続分仮分割
- 税率適用
- 按分
- 控除
この構造を理解すれば体系的に整理できます。
相続税は「構造理解」がすべてです。