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登録免許税とは?不動産登記・組織再編・役員変更の税率と実務ポイントをわかりやすく解説

組織再編成や役員変更、不動産の売買・承継など、会社経営のさまざまな場面で必要となるのが「登記」です。そして、登記を行う際には、多くの場合、登録免許税が発生します。

もっとも、登録免許税は登記の種類によって課税標準も税率も異なるため、「何にいくらかかるのか」「不動産取得税との違いは何か」「合併や土地売買には軽減措置があるのか」といった点で戸惑われる方も少なくありません。

本稿では、登録免許税の基本的な仕組み、不動産登記と商業登記の違い、不動産の所有権移転登記に係る税率、土地売買の軽減措置、合併・組織再編との関係を、初心者にもわかりやすく、実務目線で丁寧に解説いたします。

この記事のポイント

  • 登録免許税は登記に対して課される国税
  • 不動産登記と商業登記では税額の決まり方が異なる
  • 土地売買の所有権移転登記は軽減税率1.5%(令和8年3月31日まで)
  • 法人の合併による所有権移転登記は0.4%
  • 役員変更登記や本店移転登記にも登録免許税がかかる

事例の前提

会社が組織再編成を行う場合や、役員の選任・退任・重任を行う場合には、商業登記が必要になります。また、不動産の所有権が売買や合併などにより移転する場合には、不動産登記も必要になります。

このような登記を行う際には登録免許税が発生しますが、登記の種類によって税率や計算方法が異なります。たとえば、不動産の所有権移転登記では固定資産税評価額を基準に税額を計算する一方で、役員変更登記では「1件いくら」という定額課税となります。

では、登録免許税はどのような場面で発生し、どのように計算されるのでしょうか。また、土地売買や合併などにはどのような特例があるのでしょうか。

まず結論

登録免許税は、登記・登録・許認可などの手続に対して課される国税であり、会社実務では主に不動産登記商業登記の場面で問題になります。

不動産の所有権移転登記に係る登録免許税は、原則として固定資産税評価額を課税標準として計算されます。税率は、売買による土地の所有権移転で原則2.0%(軽減措置により1.5%)、建物の売買では原則2.0%、相続または法人の合併による移転では0.4%です。

また、組織再編成や役員変更に伴う商業登記にも登録免許税がかかりますが、こちらは不動産登記とは異なり、資本金額や申請件数を基準として税額が決まることが多い点が特徴です。

実務上のポイント
登録免許税は「登記する以上、何となくかかる税金」と捉えられがちですが、登記の種類ごとに課税標準も税率も全く異なります。 特に、組織再編では不動産登記と商業登記が同時に発生することも多いため、事前に分けて整理することが重要です。

論点整理

本件を理解するためには、次の論点に分けて考えると整理しやすくなります。

論点確認事項ポイント
1登録免許税とは何か登記等に課される国税
2どんな登記でかかるか不動産登記、商業登記など
3課税標準は何か不動産登記は固定資産税評価額、商業登記は資本金額や件数
4土地・建物の所有権移転の税率は何%か土地売買1.5%、建物売買2.0%など
5合併時の不動産移転はどうなるか0.4%
6役員変更登記ではどうか1件あたりの定額課税
7不動産取得税との違いは何か別の税目であり、両方かかることがある

登録免許税とは何か

登録免許税は「登記に対して課される国税」

登録免許税とは、不動産登記、商業登記、会社設立登記、抵当権設定登記など、法律上の登記や登録を受ける際に課される国税です。会社経営においては、主として次のような場面で発生します。

  • 不動産の売買や相続に伴う所有権移転登記
  • 新築建物の所有権保存登記
  • 抵当権設定登記
  • 会社設立登記
  • 役員変更登記
  • 本店移転登記
  • 合併・会社分割等の組織再編に伴う登記
区分代表例
不動産登記所有権移転、所有権保存、抵当権設定、抹消など
商業登記設立、役員変更、本店移転、合併、分割など

登録免許税の基本的な計算式

登録免許税は、原則として次の式で計算します。

登録免許税額 = 課税標準 × 税率

ただし、商業登記の中には、申請件数ごとに税額が決まる定額課税のものもあります。

登記の種類課税標準税額の決まり方
不動産の所有権移転登記不動産の価額価額×税率
抵当権設定登記債権金額または極度額金額×税率
役員変更登記申請件数1件いくら

初心者向け補足
同じ「登記」でも、土地の所有権移転と役員変更では税金の決まり方が全く違います。ここを混同すると、概算コストを大きく誤ることがあります。

不動産登記に係る登録免許税

課税標準は固定資産税評価額

不動産の所有権移転登記や所有権保存登記において、課税標準となる「不動産の価額」は、原則として固定資産課税台帳に登録された価格です。実務上は、固定資産税課税明細書や評価証明書で確認することになります。

ここで注意したいのは、基準となるのは「固定資産税課税標準額」ではなく、一般的に「価格」「評価額」と表示されている金額である点です。

確認したい項目基準になるか備考
固定資産税評価額(価格)なる原則としてこれを使用
固定資産税課税標準額ならない混同しやすいので注意
売買代金通常はならない登録免許税の基準ではない

所有権移転登記の主な税率

国税庁タックスアンサーNo.7191によると、不動産の所有権移転登記の主な税率は次のとおりです。

登記原因対象税率備考
売買土地原則2.0%、軽減1.5%軽減措置あり
売買建物2.0%住宅用家屋は別途軽減あり
相続・法人の合併土地・建物0.4%低率
贈与・交換・収用等土地・建物2.0%その他原因

土地の売買は軽減措置により1.5%

土地の売買による所有権移転登記については、原則税率は2.0%ですが、租税特別措置法72条により、一定期間は1.5%(1000分の15)に軽減されています。

画像内では「令和5年3月31日まで」とありますが、その後の税制改正により、土地売買による所有権移転登記の軽減措置は令和8年3月31日まで適用期限が延長されています。

登記本則軽減措置根拠
土地の売買による所有権移転登記2.0%1.5%(令和8年3月31日まで)租税特別措置法72条1項

実務ポイント
土地と建物を同時に売買する場合でも、土地は1.5%、建物は2.0%と税率が異なることがあります。同一申請でも、土地と建物は分けて計算するのが基本です。

合併による不動産の所有権移転は0.4%

法人の合併によって不動産の所有権が移転する場合、登録免許税の税率は0.4%(1000分の4)です。これは売買や贈与等に比べて低い税率です。

画像でも「合併による所有権の移転は1000分の4」とされていますが、これは国税庁タックスアンサーNo.7191でも確認できます。

移転原因税率根拠
法人の合併による所有権移転0.4%登録免許税法別表第一 一(二)イ

簡単な計算例

例えば、固定資産税評価額が5,125,300円の土地を売買により取得し、所有権移転登記を行う場合、課税標準は1,000円未満切捨てにより5,125,000円となります。

税率1.5%を適用すると、登録免許税額は次のとおりです。

5,125,000円 × 15/1000 = 76,875円 → 100円未満切捨てで76,800円

項目金額
固定資産税評価額5,125,300円
課税標準(1,000円未満切捨て)5,125,000円
税率1.5%
税額計算76,875円
登録免許税額(100円未満切捨て)76,800円

商業登記に係る登録免許税

役員変更登記にも登録免許税がかかる

会社の取締役、代表取締役、監査役等の選任・退任・重任に伴い登記事項が変更される場合には、商業登記が必要となり、登録免許税が発生します。

国税庁タックスアンサーNo.7191によると、役員等に関する事項の変更の登記は、原則として1件につき3万円、ただし資本金1億円以下の会社は1万円です。

登記内容税額備考
取締役・代表取締役・監査役等の変更登記1件3万円原則
同上(資本金1億円以下)1件1万円中小企業でよく使う金額

本店移転や設立・合併でも発生する

商業登記に係る登録免許税は、役員変更だけではありません。たとえば、株式会社設立、資本金の増加、本店移転、合併、会社分割などでもそれぞれ税額が定められています。

登記内容課税標準税率・税額
株式会社設立資本金額1000分の7(最低15万円)
合同会社設立資本金額1000分の7(最低6万円)
本店移転件数1箇所につき3万円
合併による設立・資本金増加資本金額等1000分の1.5(一定部分は1000分の7)
分割による設立・資本金増加資本金額等1000分の7

実務メモ
組織再編では、商業登記の登録免許税不動産登記の登録免許税が別々に発生することがあります。さらに不動産取得税が別途かかる場合もあるため、コスト見積りでは税目ごとに分けて確認しましょう。

登録免許税と不動産取得税の違い

似ているようで全く別の税金

不動産の取得や承継の場面では、「登録免許税」と「不動産取得税」が同時に話題に上がるため、両者を混同しやすいところです。しかし、これらは別の税目です。

項目登録免許税不動産取得税
税目の性質登記等に対する国税不動産取得に対する地方税
課税主体都道府県
課されるタイミング登記申請時取得後に課税
不動産移転で両方かかることあるある

不動産を移転すると、両方発生することがある

たとえば不動産売買では、所有権移転登記を行うため登録免許税がかかり、あわせて不動産取得税も課されることがあります。したがって、移転コストを検討する際は、どちらか一方だけでは不十分です。

組織再編と登録免許税

組織再編では複数の登記が発生する

合併や会社分割などの組織再編では、一般的に次のような登記が発生します。

  • 存続会社・承継会社側の商業登記
  • 消滅会社・分割会社側の商業登記
  • 不動産が移転する場合の所有権移転登記
  • 必要に応じて抵当権関連登記
再編手法商業登記不動産登記登録免許税の発生
合併あり不動産があればありあり
会社分割あり不動産があればありあり
役員変更のみありなしあり

実務上の注意点

  • 不動産の固定資産税評価額を早めに確認しておく
  • 土地と建物で税率が異なる場合があるため分けて計算する
  • 軽減措置の適用期限は登記日基準で確認する
  • 不動産取得税・司法書士報酬・証明書取得費用も含めて総コストを見積もる
  • 商業登記と不動産登記を同じ「登記費用」としてひとまとめにしない

実務上の注意
税率だけ見て判断すると、見積りがずれやすくなります。登録免許税は、課税標準の端数処理、税額の端数処理、最低税額、軽減適用の可否まで確認して初めて正確な見積りに近づきます。

初心者の方がつまずきやすいポイント

土地も建物も同じ税率で計算すると思っていた

そうとは限りません。売買による所有権移転登記では、土地は軽減措置により1.5%、建物は原則2.0%となることがあります。

登録免許税は売買代金を基準に計算すると思っていた

通常はそうではありません。原則として、固定資産課税台帳に登録された価格、すなわち固定資産税評価額を用います。

合併なら税金は全部かからないと思っていた

合併による不動産移転は0.4%の低率ですが、登録免許税がゼロになるわけではありません。また、商業登記にも登録免許税が発生します。

役員変更登記は金額が小さいので気にしなくてよいと思っていた

1回あたりの税額は比較的定額ですが、重任・退任・就任が複数回にわたると、積み重なってコストになることがあります。期限徒過リスクも含め、早めの対応が大切です。

実務担当者向けチェックリスト

チェック項目確認内容確認
登記の種類不動産登記か商業登記かを区別しているか
課税標準固定資産税評価額・資本金額・件数のどれが基準か確認したか
土地と建物の区分土地と建物を分けて税率を確認したか
軽減措置土地売買や住宅用家屋の軽減措置が使えるか確認したか
合併・分割再編手法に応じた税率を確認したか
他税目との関係不動産取得税や司法書士報酬も見積りに入れたか
登記期限役員変更等の法定期限を確認したか

まとめ

登録免許税は、会社実務において避けて通れない税金の一つです。特に、不動産の所有権移転や会社の役員変更、組織再編では、登記の必要性とともに登録免許税の負担も発生します。

不動産登記では、固定資産税評価額を基準として税額が決まり、土地売買は軽減措置により1.5%、建物売買は2.0%、相続や法人の合併による移転は0.4%といったように、原因ごとに税率が異なります。

一方、商業登記では、役員変更や本店移転、設立、合併などについて、資本金額や件数に応じて税額が定められています。

そのため、登録免許税を正しく把握するには、単に「登記があるから税金がかかる」と理解するだけでなく、どの登記を、どの原因で、どの資産について行うのかを分けて整理することが重要です。組織再編や不動産移転を予定している場合には、他の税目や登記費用も含め、事前に全体コストを確認しておくことをおすすめいたします。

根拠条文・参考資料

  • 登録免許税法 別表第一
  • 登録免許税法9条・10条・附則7
  • 租税特別措置法72条(土地の売買による所有権の移転登記等の税率の軽減)
  • 租税特別措置法72条の2、73条、74条、74条の2、74条の3、75条
  • 国税庁 タックスアンサー No.7191「登録免許税の税額表」
  • 法務局「登録免許税の計算」
  • 国税庁「土地の売買や住宅用家屋の所有権の保存登記等に係る登録免許税の税率の軽減措置に関するお知らせ」

参考
土地売買の所有権移転登記に係る軽減措置は、租税特別措置法72条1項に基づき、令和8年3月31日まで適用されています。また、住宅用家屋の保存登記・移転登記、住宅取得資金に係る抵当権設定登記の軽減措置は、令和9年3月31日まで延長されています。実務では、必ず登記日ベースで適用期限をご確認ください。

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