特定の評価会社の株式とは?比準要素数1・0、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社を公認会計士・税理士が解説
取引相場のない株式の評価は、原則として会社規模や株主区分に応じて、類似業種比準方式、純資産価額方式、あるいはその併用方式によって行います。もっとも、すべての会社にその原則的な評価方法がうまく当てはまるわけではありません。
そこで、財産評価基本通達では、通常の評価方法では適正な評価が難しい会社について、「特定の評価会社」という区分を設けています。特定の評価会社に該当すると、類似業種比準方式が使えなくなったり、純資産価額方式での評価が原則になったりと、評価結果に大きな差が生じることがあります。
本記事では、比準要素数1の会社、比準要素数0の会社、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社を中心に、初心者の方にもわかりやすく整理して解説いたします。
特定の評価会社の株式とは、そもそも何を指すのでしょうか
特定の評価会社の株式とは、取引相場のない株式のうち、通常の類似業種比準方式や併用方式では評価がなじみにくい会社の株式をいいます。その根拠は財産評価基本通達189です。
通常、非上場株式は会社の業績や純資産をもとに評価しますが、会社の実態によっては、配当・利益・純資産の要素が極端に偏っていたり、資産構成が特殊だったりして、一般的な算式では適切な価格を出しにくいケースがあります。こうした場合に備えて、通達が特別ルールを設けています。
| 項目 | 内容 | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 特定の評価会社 | 通常の評価方式がなじみにくい会社 | 財産評価基本通達189 |
| 主な類型 | 比準要素数1、比準要素数0、株式等保有特定会社、土地保有特定会社、開業後3年未満の会社など | 財産評価基本通達189、189-2、189-3、189-4 |
| 基本的な影響 | 類似業種比準方式が使えず、純資産価額方式が中心になる | 国税庁タックスアンサー No.4638 |
特定の評価会社に該当するかどうかで、株価が大きく変わることがあります。評価作業では、まず最初に「この会社は特定の評価会社に当たらないか」を確認するのが基本です。
比準要素数1の会社とは、どのような会社なのでしょうか
類似業種比準価額の計算における「1株当たりの配当金額」「1株当たりの利益金額」「1株当たりの純資産価額」のうち、いずれか2つが0円であり、かつ、直前々期末を基準に計算した場合にも、これらのうちいずれか2つ以上が0円となる会社を、比準要素数1の会社として説明しています。根拠は記載のとおり、財基通189(1)、189-2です。
このような会社は、類似業種比準方式で使うべき要素が極端に不足しているため、通常の比準方式をそのまま適用するのが難しいと考えられています。そのため、原則として純資産価額方式で評価することになります。
ただし、選択により併用方式を使えるとは、どういう意味でしょうか
比準要素数1の会社については、納税義務者の選択により、類似業種比準価額×0.25+純資産価額×0.75 の併用方式で計算することも認められるとされています。
つまり、完全に純資産価額方式へ切り替えるだけでなく、限定的に類似業種比準価額を25%だけ反映させる方法も使えるということです。この点は、純資産だけではやや評価が重くなりすぎる場面で実務上重要になります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 判定要件 | 配当・利益・純資産の3要素のうち2つが0円で、直前々期末でも2つ以上が0円 |
| 原則評価 | 純資産価額方式 |
| 選択可能な方法 | 類似業種比準価額×0.25+純資産価額×0.75 |
| 根拠 | 財基通189(1)、189-2 |
図解挿入コメント:ここでは「配当・利益・純資産」の3つの箱を並べ、2つが0円なら比準要素数1という図にすると、初学者にも直感的に伝わります。
比準要素数0の会社とは、どのような会社なのでしょうか
類似業種比準価額の計算における「1株当たりの配当金額」「1株当たりの利益金額」「1株当たりの純資産価額」のすべてが0円である場合を、比準要素数0の会社としています。根拠は財基通189(4)ロ、189-4です。
このような会社は、類似業種比準方式で参照すべき要素が完全に欠けているため、比準方式を使うことができません。したがって、評価は純資産価額方式によって行うことになります。
| 類型 | 判定内容 | 評価方法 |
|---|---|---|
| 比準要素数1の会社 | 3要素のうち2つが0円 | 原則:純資産価額方式、選択で25%比準+75%純資産 |
| 比準要素数0の会社 | 3要素のすべてが0円 | 純資産価額方式 |
比準要素数1と0は似ていますが、0の会社の方がさらに特殊性が強く、評価の自由度が小さい点に注意が必要です。
株式等保有特定会社とは、どのような会社なのでしょうか
株式等保有特定会社とは、評価会社の総資産価額(相続税評価額)に占める株式・出資・新株予約権付社債の価額の合計額の割合が50%以上である会社をいうと説明されています。根拠は財基通189(2)です。
要するに、事業会社というより、資産の大部分を株式等で保有している持株会社的な会社です。このような会社では、通常の類似業種比準方式よりも、保有資産そのものを反映する純資産価額方式の方が実態に近いと考えられます。
そのため、株式等保有特定会社に該当した場合には、類似業種比準方式を採用できず、純資産価額方式により評価することになるとしています。また、納税義務者の選択によりS1+S2方式も認められると整理されています。
S1とS2とは、何を意味するのでしょうか
S1、S2の定義が次のように示されています。
- S1:株式等保有特定会社が保有する株式等とその株式等の受取配当等の額がないものとして計算した場合の、その会社の原則的評価方式による評価額
- S2:株式等保有特定会社が保有する株式等のみをその会社が有する資産であるものとした場合の1株当たりの純資産価額
つまり、S1は「株式等保有の影響をいったん除いて見た会社の価額」、S2は「保有株式等そのものに着目した価額」というイメージで整理すると理解しやすくなります。
| 項目 | 内容 | 根拠 |
|---|---|---|
| 判定基準 | 総資産価額に占める株式等の価額割合が50%以上 | 財基通189(2) |
| 原則評価 | 純資産価額方式 | 財基通189-3 |
| 選択肢 | S1+S2方式 | 記載の整理 |
| S1 | 保有株式等と受取配当等を除いた前提での原則的評価額 | 記載のとおり |
| S2 | 保有株式等のみを資産とみた場合の1株当たり純資産価額 | 記載のとおり |
税理士コメント:株式等保有特定会社は、見た目は事業会社でも、資産の中身を確認すると実質的に持株会社になっていることがあります。貸借対照表の資産構成を必ず確認しましょう。
土地保有特定会社とは、どのような会社なのでしょうか
土地保有特定会社とは、評価会社の総資産価額(相続税評価額)に占める土地等の価額の合計額の割合が一定以上である会社をいうとされています。根拠は財基通189(3)です。
この判定割合は会社規模によって異なり、次のとおり整理されています。
| 会社規模 | 判定基準 |
|---|---|
| 大会社 | 70%以上 |
| 中会社 | 90%以上 |
また、小会社については、下記表により、業種と総資産価額に応じて判定基準が細かく分かれています。
小会社の土地保有特定会社は、どのように判定するのでしょうか
| 業種 | 総資産価額 | 土地等割合の基準 |
|---|---|---|
| 卸売業 | 2,000万円以上 | 70%以上 |
| 卸売業 | 70万円以上2,000万円未満 | 90%以上 |
| 小売・サービス業 | 1,500万円以上 | 70%以上 |
| 小売・サービス業 | 40万円以上1,500万円未満 | 90%以上 |
| その他 | 1,500万円以上 | 70%以上 |
| その他 | 50万円以上1,500万円未満 | 90%以上 |
土地保有特定会社に該当した場合には、類似業種比準方式を採用することができず、純資産価額方式によって評価することになるとされています。根拠は財基通189-4です。
図解挿入コメント:ここは「総資産のうち土地がどれだけ占めるか」を円グラフで見せると、土地保有特定会社のイメージがつかみやすくなります。
開業後3年未満の会社は、なぜ特定の評価会社になるのでしょうか
開業後3年未満の会社に該当した場合には、類似業種比準方式を採用することができず、純資産価額方式により計算することになると説明されています。根拠は財基通189(4)イ、189-4です。
その理由は、開業後まもない会社では、配当・利益・純資産などの実績がまだ十分に蓄積されておらず、類似業種比準方式で比較するための材料が安定していないからです。したがって、現時点の資産・負債の状況を重視する純資産価額方式の方が適切と考えられています。
| 類型 | 理由 | 評価方法 |
|---|---|---|
| 開業後3年未満の会社 | 業績実績が十分に蓄積されていないため | 純資産価額方式 |
そのほか、特定の評価会社にはどのようなものがあるのでしょうか
詳細な解説は省略されているものの、その他の特定の評価会社として次のものが挙げられています。
- 開業前または休業中の会社
- 清算中の会社
国税庁のタックスアンサーでも、特定の評価会社の株式については、原則として(1)から(5)までは純資産価額方式、(6)については清算分配見込額で評価する旨が示されています。したがって、実務ではこれらの会社も特定の評価会社の検討対象から外すことはできません。
| 類型 | 取扱い | 実務上の留意点 |
|---|---|---|
| 開業前または休業中の会社 | 解説省略 | 営業実態の有無を確認する |
| 清算中の会社 | 解説省略 | 清算分配見込額による評価が問題になる |
特定の評価会社の株式は、どの順番で判定するとわかりやすいのでしょうか
特定の評価会社の判定は論点が多いため、実務では順序立てて確認するのが有効です。初心者の方は、次の流れで整理すると理解しやすくなります。
- まず、通常の会社規模区分と原則評価方法を確認する
- 次に、配当・利益・純資産の3要素を見て、比準要素数1または0に当たらないか確認する
- そのうえで、資産の中身を確認し、株式等保有特定会社・土地保有特定会社に該当しないか検討する
- さらに、開業後3年未満、開業前、休業中、清算中などの特殊事情がないか確認する
- 最後に、純資産価額方式で評価するのか、選択適用できる併用方式があるのかを整理する
| 確認ステップ | 見るべきポイント | 主な根拠 |
|---|---|---|
| 1 | 通常の評価区分 | 財基通178〜180、No.4638 |
| 2 | 比準要素数1・0の判定 | 財基通189、189-2、189-4 |
| 3 | 株式等・土地の保有割合 | 財基通189(2)(3)、189-3、189-4 |
| 4 | 開業後3年未満、休業中、清算中等の事情 | 財基通189、189-4、No.4638 |
| 5 | 最終的な評価方式の決定 | 各通達・評価明細書 |
税理士コメント:特定の評価会社の判定は、最初に資産構成と業績要素を一覧化すると整理しやすくなります。貸借対照表と株価算定資料を並べて確認するのがおすすめです。
初心者が間違えやすいポイントはどこでしょうか
特定の評価会社の株式評価では、次のような誤りが起きやすいため注意が必要です。
- 比準要素数1と比準要素数0の違いを曖昧にしたまま判定してしまう
- 株式等保有特定会社の判定で、資産の中の株式・出資・新株予約権付社債を漏らしてしまう
- 土地保有特定会社の判定で、会社規模や業種別基準を見落とす
- 開業後3年未満の会社なのに、通常どおり類似業種比準方式で評価してしまう
- 純資産価額方式が原則となるケースで、選択可能な併用方式の有無を確認しない
| よくある誤り | 原因 | 防止策 |
|---|---|---|
| 比準要素数1と0を混同する | 3要素の確認不足 | 配当・利益・純資産を表にして判定する |
| 株式等保有割合を誤る | 資産内訳の見落とし | 有価証券・出資・新株予約権付社債を個別確認する |
| 土地保有特定会社の基準を誤る | 会社規模別基準の未確認 | 大会社・中会社・小会社で別表確認する |
| 開業後3年未満を見落とす | 設立日確認不足 | 登記事項証明書や沿革資料を確認する |
| 選択適用を見落とす | 原則評価だけで止めてしまう | 189-2、189-3の選択肢まで確認する |
まとめ|特定の評価会社の株式は、まず「通常評価がなじむか」を考えることが大切です
特定の評価会社の株式は、通常の類似業種比準方式や併用方式では実態を適切に反映しにくい会社について、例外的な評価ルールを設けたものです。取り上げている主な類型を整理すると、次のとおりです。
- 比準要素数1の会社:原則は純資産価額方式。選択により25%比準+75%純資産も可能
- 比準要素数0の会社:純資産価額方式
- 株式等保有特定会社:純資産価額方式が原則。選択でS1+S2方式も検討
- 土地保有特定会社:純資産価額方式
- 開業後3年未満の会社:純資産価額方式
つまり、特定の評価会社の判定では、「通常の比準方式が使えるか」を漫然と考えるのではなく、業績要素の有無、資産構成、会社の沿革という3つの視点から順番に確認していくことが重要です。非上場株式評価の実務では、評価明細書を作る前の判定段階こそが、最も大切な作業といえるでしょう。
根拠条文・通達・参考資料
- 財産評価基本通達189(特定の評価会社の株式)
- 財産評価基本通達189-2(比準要素数1の会社の株式の評価)
- 財産評価基本通達189-3(株式等保有特定会社の株式の評価)
- 財産評価基本通達189-4(土地保有特定会社の株式又は開業後3年未満の会社等の株式の評価)
- 国税庁タックスアンサー No.4638「取引相場のない株式の評価」
- 国税庁「国外財産の評価-取引相場のない株式の場合(1)」