海外転勤者に支給した賞与はなぜ日本で課税されるのか
― 非居住者給与課税の実務ロジック ―
海外赴任者に関する税務処理は企業実務の中でも特に難しい分野です。
その中でもよく問題になるのが、
👉 「海外赴任後に支給した賞与が日本で課税されるのはなぜか」
という論点です。
本記事では、海外転勤者に支給した賞与の課税関係について
居住者判定・国内源泉所得・源泉徴収義務の実務整理を行います。
ケース(質問)
当社の社員Aは、3年間の予定で4月1日に米国支店へ転勤しました。
その後6月20日に賞与を80万円支給しました。
この賞与は、前年10月から3月までの勤務期間を対象として算定されたものです。
税務調査において、この賞与については源泉徴収が必要であったと指摘されました。
当社としては、賞与支給時点では社員Aは非居住者であったため、課税は不要と考えていました。
なぜ日本で課税されるのでしょうか。
論点整理
このケースの重要論点は次の通りです。
| 論点 | 内容 | 実務重要度 |
|---|---|---|
| 非居住者課税 | 国内源泉所得かどうか | 非常に重要 |
| 賞与の帰属期間 | 支給日ではなく勤務期間 | 極めて重要 |
| 源泉徴収義務 | 税率20.42% | 実務直結 |
| 二重課税 | 外国税額控除 | 高い |
海外赴任後は非居住者になる
| 状況 | 判定 |
|---|---|
| 1年以上海外勤務予定 | 非居住者 |
| 判定時期 | 出国の翌日 |
したがって本ケースでは、
👉 4月2日から非居住者
となります。
しかし賞与は日本勤務期間に対応している
ここが最重要論点です。
賞与課税の考え方
| 判定基準 | 内容 |
|---|---|
| 支給日 | 関係なし |
| 対象勤務期間 | 非常に重要 |
| 勤務地 | 課税国決定 |
つまり
👉 賞与は「いつ働いたか」で課税国が決まる
のです。
本ケースの課税関係
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 賞与対象期間 | 日本勤務 |
| 支給日 | 非居住者期間 |
| 所得区分 | 国内源泉所得 |
| 日本課税 | あり |
源泉徴収方法
非居住者給与は次のように処理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 税率 | 20.42% |
| 年末調整 | 不要 |
| 扶養控除 | なし |
| 住民税 | なし |
実務で最も多い誤解
| 誤解 | 正しい考え方 |
|---|---|
| 支給日で判定 | 勤務期間で判定 |
| 非居住者は非課税 | 国内源泉なら課税 |
| 海外勤務給与は全て非課税 | 日本勤務分は課税 |
二重課税の調整
| 国 | 課税 |
|---|---|
| 日本 | 源泉課税 |
| 米国 | 居住者課税 |
この場合は
👉 外国税額控除で調整
します。
実務フロー(重要)
| Step | 内容 |
|---|---|
| ① 賞与期間確認 | 勤務地判定 |
| ② 居住者区分確認 | 非居住者課税 |
| ③ 源泉徴収 | 20.42% |
| ④ 租税条約確認 | 減免可能性 |
| ⑤ 税額控除案内 | 従業員対応 |
まとめ
海外赴任者給与では
👉 「支給日ではなく勤務期間」が税務判断の核心
です。
企業担当者は
- 賞与算定期間
- 勤務地
- 居住者判定
を必ずセットで確認する必要があります。