会計の開示における「直接法」と「間接法」とは?
会社法と有価証券報告書で開示が違っても問題ないのかをプロが解説
決算書を見ていると、
- 「キャッシュ・フロー計算書は間接法」
- 「直接法での開示はしていない」
- 「会社法と有価証券報告書で表示が違う」
といった表現に出会うことがあります。
特に実務初心者の方からは、
「会社法と金商法で表示方法が違っていて大丈夫なの?」
「同じ会社なのに、直接法と間接法が混在していて問題にならない?」
といった疑問を持たれることが少なくありません。
結論から言うと、
会社法と金融商品取引法では開示目的・規定が異なるため、
表示方法が異なっていても原則として問題にはなりません。
本記事では、その理由を含めて、
直接法・間接法の基本から、開示実務の考え方までを
丁寧に解説します。
1.そもそも「直接法」と「間接法」とは?
キャッシュ・フロー計算書における表示方法
直接法・間接法という言葉は、
**キャッシュ・フロー計算書(特に営業活動によるCF)**の表示方法を指します。
① 直接法とは?
直接法は、
実際の現金の収入と支出を、項目ごとに表示する方法
です。
例(イメージ)
- 商品の販売による収入
- 仕入代金の支払
- 人件費の支払
- 利息の支払
👉
お金の動きが直感的に分かるのが特徴です。
② 間接法とは?
間接法は、
税引前当期純利益を出発点として、
非資金項目や運転資本の増減を調整する方法
です。
例(イメージ)
- 税引前当期純利益
- 減価償却費の加算
- 売上債権の増減
- 棚卸資産の増減
👉
損益とキャッシュ・フローの関係が分かりやすいのが特徴です。
2.なぜ2つの方法が存在するのか?
直接法と間接法の考え方の違い
| 観点 | 直接法 | 間接法 |
|---|---|---|
| 分かりやすさ | ◎ | △ |
| 作成コスト | △ | ◎ |
| 実務での普及 | 少数 | 多数 |
| 利益との対応 | △ | ◎ |
理論的には、
- 直接法の方が情報としては有用
とされています。
一方で、
- 実務上の負担が大きい
- システム対応が必要
といった理由から、
日本企業の多くは間接法を採用しています。
3.会社法上の計算書類での扱い
会社法の計算書類とは?
会社法では、株式会社に対して、
- 貸借対照表
- 損益計算書
- 個別注記表
などの作成・開示を求めています。
重要ポイント
👉 会社法では、キャッシュ・フロー計算書の作成は原則不要です。
会社法における直接法・間接法の位置づけ
会社法の計算書類には、
- キャッシュ・フロー計算書
- 直接法・間接法
という概念自体が基本的に登場しません。
つまり、
会社法上は「直接法か間接法か」を問題にする場面がほぼない
というのが実務上の整理です。
4.金融商品取引法(有価証券報告書)での扱い
有価証券報告書の目的
金融商品取引法に基づく有価証券報告書は、
投資家の意思決定に資する情報提供
を目的としています。
そのため、
- 連結財務諸表
- キャッシュ・フロー計算書
の開示が必須です。
直接法・間接法の選択
有価証券報告書においては、
- 営業活動によるキャッシュ・フロー
について、
直接法または間接法のいずれかを選択可能
とされています。
ただし実務上は、
- ほぼすべての上場企業が間接法
を採用しています。
5.会社法と金商法で表示が違っても問題ないのか?
結論:問題になりません
ご質問の前提どおり、
会社法と金融商品取引法では、
開示目的・規定自体が異なるため、
表示方法が異なっていても問題になりません。
これは実務上も、監査上も、明確な整理です。
なぜ問題にならないのか?
理由は大きく3つあります。
① 開示目的が異なる
| 法律 | 主な目的 |
|---|---|
| 会社法 | 債権者保護・配当規制 |
| 金融商品取引法 | 投資家保護 |
👉
求められる情報の性質が違うため、
表示方法が異なるのは当然とされています。
② 開示書類が別物
- 会社法:計算書類
- 金商法:有価証券報告書(連結財務諸表)
👉
**同じ会社でも「別の目的の書類」**です。
③ 規定レベルで直接の整合性要求がない
会社法と金商法の間で、
- 「同一の表示方法でなければならない」
という規定は存在しません。
6.実務で注意すべきポイント
注意① 「不整合」と「誤り」を混同しない
- 開示方法が違う
→ 不整合ではない - 会計処理が間違っている
→ 誤り
👉
直接法・間接法の違いは、
**「選択の違い」**であって誤りではありません。
注意② 投資家への説明可能性
たとえ問題がなくても、
- 読者が混乱しないか
- 説明できるか
は重要です。
IR説明や質疑応答では、
「会社法ではCF計算書を作成していないため、
有報では間接法を採用しています」
といった整理ができることが望ましいです。
注意③ 注記・補足説明との整合性
- キャッシュ・フローの注記
- セグメント情報
- 経営指標
などで、
- 表示の考え方が一貫しているか
はチェックポイントになります。
7.監査の視点ではどう見られる?
監査人の基本スタンス
監査では、
- 適用される法令・会計基準に
- 適切に準拠しているか
が判断基準です。
そのため、
- 会社法:会社法ルールに準拠
- 金商法:会計基準・開示規則に準拠
していれば、
直接法・間接法の違い自体が指摘されることはありません。
8.初心者向けに一言でまとめると
直接法と間接法は、
主に有価証券報告書のキャッシュ・フロー計算書の話であり、
会社法の計算書類とは土俵が違う
という理解が重要です。
まとめ|「違っていても問題ない」は正しい
最後に結論を整理します。
- 直接法・間接法はCF計算書の表示方法
- 会社法ではCF計算書は原則不要
- 有価証券報告書では間接法が一般的
- 両者で開示方法が異なっていても、
法令・目的が違うため問題にならない
実務では、
「なぜ違うのか」を説明できること
が何より重要です。