令和8年度税制改正のポイント【地方税編】
個人住民税・ふるさと納税・固定資産税はどう変わる?実務への影響をやさしく解説
令和8年度税制改正大綱では、
所得税だけでなく**地方税(個人住民税・固定資産税など)**についても、
生活や実務に直結する重要な見直しが数多く盛り込まれました。
特に今回の地方税改正の特徴は、
- 給与所得者・低中所得者への配慮
- 高所得者層への制度の適正化
- 物価上昇や社会構造の変化への対応
という点にあります。
本記事では、
個人住民税の控除、ふるさと納税、固定資産税、利子割といった
実務で影響の大きい論点について、
**「結局、誰に・どんな影響があるのか」**を軸に、
初心者にも分かるよう丁寧に解説します。
1.個人住民税における給与所得控除の最低保障額の引上げ
そもそも給与所得控除とは?
給与所得控除とは、簡単に言うと、
給与を得るために必要な経費を、
あらかじめ一定額差し引いてくれる制度
です。
会社員やパート・アルバイトの方は、
- 実際に経費を計算しなくても
- 一定額を自動的に控除
できる仕組みになっています。
最低保障額とは何か?
給与所得控除には、
- 給与が少ない人ほど有利になる
「最低保障額」
が設けられています。
👉
今回の改正は、この最低保障額の引上げがポイントです。
改正内容の整理
令和8年度税制改正大綱では、
- 所得税における基礎控除等の見直し
- 物価上昇への対応
を踏まえ、個人住民税でも給与所得控除の見直しが行われます。
改正後の最低保障額
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 現行 | 65万円 |
| 改正後(本則) | 69万円 |
| 令和9・10年度の時限措置 | 74万円 |
👉
2年間限定で、合計9万円の引上げとなります。
同一生計配偶者・扶養親族の要件も見直し
今回の改正では、
- 同一生計配偶者
- 扶養親族
の前年の合計所得金額要件も、
- 現行:58万円以下
- 改正後:62万円以下
へ引き上げられています。
これは、
- 扶養控除
- 配偶者控除
の判定に影響するため、
年末調整・住民税計算の実務で重要な変更点です。
2.地方税独自の「非課税ライン」はどう変わる?
地方税の非課税限度額とは?
個人住民税には、
一定の所得以下であれば、住民税が課税されない
という「非課税限度額」があります。
これは所得税とは別に、
地方税独自で定められているラインです。
単身者の場合の比較
| 区分 | 現行 | 改正後 |
|---|---|---|
| 基本額 | 45万円 | 45万円(変更なし) |
| 給与所得控除 | 65万円 | 69万円(2年間は74万円) |
| 合計 | 110万円 | 114万円(2年間は119万円) |
👉
住民税がかからない年収ラインが引き上げられることになります。
実務への影響
- パート・アルバイトの住民税非課税判定
- 自治体からの課税・非課税通知
- 保育料・各種行政サービスの判定
などに影響するため、
所得税以上に生活面での影響が大きい改正といえます。
3.ふるさと納税制度の見直し【高所得者向け】
ふるさと納税の基本構造
ふるさと納税は、
- 所得税の寄附金控除
- 個人住民税の基本控除+特例控除
によって、
実質2,000円の自己負担で寄附ができる制度です。
今回の見直しのポイント
令和8年度改正では、
個人住民税の特例控除額に上限を設ける
という見直しが行われます。
特に、
- 給与収入が非常に高い層
に対して、
「無制限に控除が増え続ける仕組み」を是正する狙いがあります。
新設される上限の仕組み
特例控除額は、
- 個人住民税所得割額の2割
または - 一定額(都道府県民税+市町村民税)
のいずれか低い金額までとなります。
結果として、
- 給与収入1億円相当を超える水準では
- 特例控除額が頭打ち
となります。
給与収入1億円の場合のイメージ
例として、
- 給与収入1億円
- ふるさと納税の寄附額:438万円
の場合、
| 区分 | 控除額 |
|---|---|
| 所得税(45%) | 約201万円 |
| 住民税・基本分(10%) | 約44万円 |
| 住民税・特例分 | 193万円(上限) |
👉
改正前は制限がなかった特例控除に、明確な天井が設けられます。
実務での注意点
- 高所得者向けの寄附シミュレーションは要見直し
- ワンストップ特例の適用判断
- 税務・住民税通知の説明対応
が必要になります。
4.固定資産税の免税点の見直し
免税点とは?
固定資産税の免税点とは、
一定額未満の固定資産には、課税しない
という仕組みです。
改正内容
| 区分 | 現行 | 改正後 |
|---|---|---|
| 家屋 | 20万円 | 30万円 |
| 償却資産 | 150万円 | 180万円 |
| 土地 | 30万円 | 30万円(据置) |
👉
小規模事業者・個人事業主への配慮が強化されています。
実務への影響
- 少額資産の申告・課税の簡素化
- 小規模事業者の事務負担軽減
- 自治体側の徴税コスト削減
といった効果が期待されます。
5.新築住宅に係る固定資産税の特例措置の拡充・延長
制度の概要
新築住宅については、
- 一定期間
- 固定資産税を減額
する特例措置があります。
改正ポイント
- 床面積要件
- 上限:280㎡ → 240㎡
- 下限:50㎡ → 40㎡
- 適用期限:5年延長
※ただし、東京都の特定都市再生緊急整備地域は下限50㎡を維持。
実務的な意味
- コンパクト住宅への対応
- 住宅取得支援の継続
- 不動産取得時の税額試算の見直し
が必要になります。
6.道府県民税利子割に係る清算制度の導入
なぜ見直しが必要だったのか?
インターネット銀行の普及により、
- 口座所在地
- 実際の居住地
が一致しないケースが増えています。
清算制度の仕組み
- 金融機関は従来どおり口座所在地に納税
- その後、都道府県間で税収を清算
- 清算後の税収の6割は市区町村へ交付
👉
税収の偏在是正が目的です。
まとめ|地方税改正は「生活と実務」に直結する
令和8年度税制改正の地方税分野は、
- 低中所得者への負担軽減
- 高所得者への制度の適正化
- 小規模事業者・住宅取得者への配慮
という方向性が明確です。
特に、
- 個人住民税の非課税判定
- ふるさと納税の上限
- 固定資産税の免税点
は、実務担当者・納税者ともに影響が大きい論点です。
制度を正しく理解し、
「いつから」「誰に」「どのような影響があるのか」
を整理しておくことが、
これからの実務対応のカギとなります。