【貸倒損失の税務】破産した得意先の売掛金はいつ損金にできる?
― 計上時期を誤ると税務否認される重要論点 ―
■ 事例(質問)
5年前から継続取引していた得意先A社について、
この度裁判所から「破産手続開始通知書」が届きました。
売掛金は約300万円残っており、
- 最後の取引:1年前
- 最後の入金:半年前
- 現在は連絡不能
という状況です。
破産手続開始決定が出たため、
売掛金は貸倒損失として計上したいと考えています。
税務上問題はないでしょうか。
■ 結論(最重要ポイント)
👉 破産手続開始決定だけでは貸倒損失は計上できません。
税務上は
- 破産手続終結決定
- 又は破産手続廃止決定
があった事業年度に
回収不能額を貸倒損失として損金算入することになります。
(根拠:法人税基本通達9-6-1)
■ 税務上の貸倒損失の3つの区分
税務では貸倒損失は次の3種類に整理されています。
① 法律上の貸倒れ
法的手続により債権が消滅した場合
例
- 更生計画認可
- 再生計画認可
- 破産終結
- 債務免除契約
👉 この場合
その事実が発生した事業年度に損金算入
(根拠:法基通9-6-1)
② 事実上の貸倒れ
債務者の資産状況から
全額回収不能が明らかな場合
例
- 行方不明
- 財産なし
- 長期弁済不能
👉 回収不能が明らかになった年度に損金算入
(根拠:法基通9-6-2)
③ 形式上の貸倒れ(売掛金特例)
売掛債権について
👉 取引停止後1年以上経過し弁済がない場合
売掛金から備忘価額(通常1円)を控除した額を
貸倒損失として損金算入できます。
(根拠:法基通9-6-3)
■ 破産手続における貸倒計上のタイミング
破産手続は次の流れになります。
ケース① 財産がある場合
- 財産換価
- 配当実施
- 破産終結決定
👉 配当されなかった残額
→ この年度で貸倒損失
ケース② 財産がない場合
- 破産費用も不足
- 破産手続廃止決定
👉 配当ゼロ確定
→ この年度で貸倒損失
■ 非常に重要な税務リスク
「貸倒計上時期の誤り」
例えば
- 破産廃止通知を受けたが計上忘れ
- 利益が出た翌年に計上
これは
👉 税務上認められません。
理由
→ 利益操作防止
この場合は
👉 更正の請求を行うことになります
(期限:法定申告期限から5年以内)
■ 本件の実務的判断
今回のケースでは
- 破産開始決定のみ
- 配当見込額不明
であるため
👉 現時点では貸倒損失計上不可
■ しかし重要な別論点
「形式上の貸倒」の可能性
今回の事実関係
- 最後の取引:1年前
- 最後の入金:半年前
形式上貸倒の判定は
👉 取引停止時と最後の入金の遅い方から1年
つまり
👉 半年前が起点
したがって
👉 あと半年経過すれば貸倒計上可能
(根拠:法基通9-6-3)
■ 中小企業の重要制度
個別評価貸倒引当金
資本金1億円以下の法人は
👉 破産申立てがあった時点で
貸倒引当金計上が可能
限度額
(債権額 − 実質債権でない額 − 回収見込額)×50%
(根拠:法人税法52条1項、法人税法施行令96条)
👉 実務では
まず引当金 → 最終的に貸倒損失
という流れが多いです。
■ 税務調査でよく争われるポイント
- 回収努力をしていない
- 形式上貸倒の起算日誤り
- 破産情報の証拠未保存
- 引当金と貸倒の区分誤り
- 利益調整疑い
■ まとめ
- 破産開始決定だけでは貸倒不可
- 終結または廃止で貸倒確定
- 形式上貸倒の特例は重要
- 中小企業は引当金制度を活用
- 計上時期誤りは重大税務リスク