【会社法】定款変更が必要なケースを網羅!
― 初心者でも迷わない「覚え方」と実務での判定フロー ―
会社法の手続で頻出なのが「定款変更」。
ただ、実務でも試験でもよくあるのがこの悩みです。
- これって定款変更が必要?登記だけで足りる?
- 株主総会の特別決議が要る?普通決議でいい?
- “定款に書いてある事項”と“定款変更事項”の線引きが分からない
結論から言うと、定款変更は
「会社のルールブック(定款)に書かれたルールを変える手続」
なので、**“定款に書いてある(=定款記載事項)を変えるとき”**に発生します。
本記事では、
- 定款変更が必要なケースを網羅的に整理
- 迷いやすい「登記だけでいいケース」との違い
- 実務で使える判定フロー
- 覚え方(暗記より理解で)
を、初心者でも分かりやすく丁寧に解説します。
1. まず大前提:定款記載事項は3種類
定款に書ける(書くべき)事項は、会社法上ざっくり3分類です。
| 分類 | 内容 | 変更すると? |
|---|---|---|
| 絶対的記載事項 | 書かないと定款自体が無効になる事項 | 必ず定款変更 |
| 相対的記載事項 | 書かないと効力が生じない事項(書いたら効く) | 書いてあるなら定款変更 |
| 任意的記載事項 | 書いても書かなくてもよい(会社のルール) | 書いてあるなら定款変更 |
つまり覚え方の基本はこれです:
✅ 定款に書いてあることを変えるなら定款変更
✅ 書いてないなら“定款変更”ではなく、別手続(登記など)だけのこともある
2. 定款変更の決議要件(超重要)
定款変更は原則、株主総会の特別決議です。
- 出席株主の議決権の 2/3以上(原則)
- 定足数は 議決権過半数出席(原則)
※公開会社かどうか等で細かい例外はありますが、初心者はまず「定款変更=特別決議」と覚えるのが鉄則です。
3. 【網羅】定款変更に該当する代表ケース一覧(重要度順)
ここからが本題です。
実務でよく出る順に、定款変更が必要なケースをまとめます。
① 商号・目的・本店所在地(会社の“顔”)
✅ 定款変更が必要
- 商号の変更(会社名を変える)
- 目的の変更(事業目的を追加・削除)
- 本店所在地(市区町村レベル)の変更
※定款が「東京都〇〇区」といった市区町村まで書いている場合
実務の注意点
- 目的変更は、金融機関・取引先・許認可に影響
- M&Aや新規事業の前に目的追加が必要なことが多い
② 発行可能株式総数・株式の内容(株の基本ルール)
✅ 定款変更が必要
- 発行可能株式総数の変更(増資前に必須になることが多い)
- 株式の譲渡制限の変更(譲渡制限会社⇄公開会社)
- 種類株式の発行・内容変更(優先配当、取得条項など)
- 単元株式数の設定・変更(上場準備でよく出る)
覚えておくべき実務あるある
- 「増資したいのに発行可能株式総数が足りない」
→ まず定款変更が必要、でスケジュールが遅れる
③ 機関設計(取締役会・監査役など“組織の形”)
✅ 定款変更が必要(会社の構造が変わるため)
- 取締役会設置会社にする/やめる
- 監査役設置会社にする/やめる
- 監査等委員会設置会社にする
- 指名委員会等設置会社にする
- 会計監査人設置会社にする/やめる
実務のポイント
- 「会社の機関」は登記だけでなく、定款で前提を整える必要がある
- IPO準備で機関設計の変更は頻出
④ 株主総会・取締役等の運営ルール(手続のルール)
✅ 定款変更が必要
- 株主総会の招集権者の定め(例:取締役が招集する等)
- 基準日の設定
- 議決権制限株式の定め
- 取締役・監査役の員数の上限(定款で定めている場合)
- 取締役の任期伸長(最長10年までの例外を使う等)
実務あるある
- オーナー企業で「任期10年にして手間を減らしたい」
→ 定款変更+登記が必要
⑤ 公告方法(地味だけど落とし穴)
✅ 定款変更が必要
- 公告方法の変更
(官報→電子公告、日刊新聞→官報など)
実務の注意点
- 電子公告は運用ルール・URL管理・事故対応が必要
- 上場準備では公告方法が監査や法務DDでチェックされる
⑥ 剰余金配当・利益処分(配当のルール)
✅ 定款変更が必要
- 中間配当を可能にする定め
- 剰余金配当の決定機関を取締役会にする(取締役会設置会社のみ)
⑦ 株券発行の定め(M&Aで地雷になりやすい)
✅ 定款変更が必要
- 株券を発行する旨の定めを廃止(株券不発行会社へ)
- 株券発行会社にする(今はほぼやらない)
実務の注意点
- M&Aで株券発行会社が残っていると、クロージングが難しくなる
- 早めに株券不発行へ移行するのが安全
⑧ 事業年度(決算期)の変更
✅ 定款変更が必要
- 事業年度(決算日)を変更する
実務では、グループの決算統一やIPO準備でよく出ます。
⑨ 解散・清算など(通常は稀だが、知識として)
✅ 定款変更が必要になりうる
- 存続期間の定め(定めている会社で期間変更する等)
- 特定の解散事由を定款に置いている場合の変更
4. 迷いやすい論点:「登記だけで足りる」ケースとの違い
ここが初心者最大の混乱ポイントです。
例:本店移転
- 定款が「東京都港区」と書いている
- 港区→渋谷区へ移転:定款変更+登記
- 港区内で移転:登記だけ(定款変更不要)
- 定款が「東京都に置く」だけ
- 都内移転:登記だけ
👉 “定款にどこまで書いているか”で結論が変わるのがポイントです。
5. 覚え方:定款変更は「会社のDNAが変わるとき」
暗記のコツは、細かい条文ではなく“分類”で覚えることです。
覚え方(最強)
定款変更=会社のDNAが変わるとき
DNAの中身はこの7つでOKです(語呂:「顔・事・株・組・運・公・期」)
| ひと言 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 顔 | 会社の表札 | 商号 |
| 事 | 何をする会社か | 目的 |
| 株 | 株のルール | 譲渡制限、種類株 |
| 組 | 組織の形 | 取締役会、監査役 |
| 運 | 運営ルール | 任期、招集 |
| 公 | 公告 | 官報→電子公告 |
| 期 | 決算期 | 事業年度 |
この7カテゴリの変更は、基本的に 定款変更を疑う。
初心者はまずこれで十分に戦えます。
6. 実務での判定フロー(そのまま使える)
最後に、現場で迷ったときのチェック手順です。
- 変更したい事項を一言で書く
- 定款を開いて、その文言があるか確認
- ある → 定款変更が必要
- ない → 定款変更不要の可能性(登記や決議で足りるかを確認)
- 変更が「DNA7カテゴリ」に当てはまるか確認(当てはまるなら要注意)
まとめ
- 定款変更は原則「株主総会の特別決議」
- 定款変更が必要かは「定款に書いてあるか」で決まる
- 網羅カテゴリは「顔・事・株・組・運・公・期」
- 迷ったら、定款を開いて“文言の有無”で判定